二人で一人〜永遠に



1ヶ月、2ヶ月と日にちと時間が過ぎていった。

陵君と私の間には、点字の本を挟んで、距離が縮まっていった。

千冬との繋がりは、違う人間の影を借り縮まっていくのが、俺は寂しさを感じていた。

ウッドデッキで、夜空を観ていると、兄貴は俺の隣に静かに座った。

「琉汰、疲れているんじゃないか?」

兄貴は、俺にビールを渡し言った。

「…疲れてない、ただ……辛い…」

「辛い?…」

「あぁ、千冬の傍に居るのに、千冬が遠く感じて…千冬は、隣に俺が居る事を分からず、俺の名じゃなく陵と呼ぶ…」

「勝手なこと言うな!」


【!…】

「…………」

「お前が決めたことだろ!?お前が望んで、千冬の傍に居たいって!…なのに何が辛いだよ!だったら、もう千冬に会うな!」

「…兄貴」

「………」

兄貴は、そのまま部屋に入っていった。

「……馬鹿だな、俺は…」



――「…琉汰、元気ですか?…私は、今…前に進んで…歩き始めています……」


私は、紙に点字を押し宛てた。

「逢いたいよ…琉汰…逢い…」

〔グシャ…〕

私は、紙を手の中で潰した。

「…こんな手紙書いて、どうすんのよ…」