「今自分の部屋に居るわ」
おばちゃんも小声で答えた。
「ちょっと待ってね……千冬!陵君来たわよ!」
「…はーい!」
奥の部屋から、元気に返事をする千冬の声が、俺の耳に届いた。
【…千冬、昔もこんな感じで、千冬を待ってた事あったな…】
「最近、千冬が昔に戻ったように感じるのよ…琉汰のお陰ね、ありがとう…」
「…俺は何も…」
【!…】
奥から、千冬が出てきた。
おばちゃんは、振り返り千冬の元に向かった。
「お母さん、陵君は?」
私は、お母さんの腕に掴まり言った。
「玄関で待ってるわ」
「そう」
近づいてくる千冬の笑顔が、輝いて見えた。
「…陵君、千冬をお願いします」
「…………」
おばちゃんは、笑顔で俺に言った、俺は軽く頭を下げた。
俺は、千冬の腕を軽く握った。
「行ってきます!」
「行ってらっしゃい!」
「陵君」
俺は、千冬の横顔を見た。
「…………」
「…聞こえてないか…」
【聞こえているよ、千冬】
俺は、右手で握る鈴を千冬の耳元で鳴らした。
「あっ…聞こえてたのね」
千冬は、足を止め俺の方を向き左腕を掴んだ。

