二人で一人〜永遠に

「…陵〔りょう〕の手だ、千冬の手を握ってる…」

【…陵〔りょう〕…】

私は、陵と言う人が握る手に、懐かしさを感じた……。


俺は、千冬の目になる……。

私は、陵君の口になる……。


次の日から、陵君は私の家まで向かいに来た、私と陵君は互いを支える為に勉強を始めた。

「…陵君は、唇で話している事が分かるのよね?」


「…………」

俺は、隣に座る千冬を見ていた。

「…何か、返事の合図を考えないとね…」

〔シャリンッ…〕

【鈴…】

私の耳元で、優しく鈴の音が鳴った。

【千冬…】

「…鈴で返事を?…」

千冬は、問いかけながら言った。

俺は、もう一度鈴を揺らした。

【…琉汰】

【…千冬】



俺と千冬は、その日から点字の勉強を始めた。


昔とは、違うが千冬と一緒の時間を共に歩き始めた………俺にとって大切な時間だった。

千冬には、俺の声は聞こえなくても……千冬と話せなくても俺は、幸せなんだ……。


いつものように、玄関のチャイムを鳴らすと、おばちゃんが出てきた。

「琉!…」

おばちゃんは、口元を手で抑えた。

「…千冬は?」

俺は、小声で言った。