私の腕を掴む、お母さんの手をはらった。

「…千冬」

「お願い…一人にして…」

私は、ベッドの上で顔を隠した。

静かに、病室のドアが開き閉まった。

「………見えない…私の眼が……何で……何で私なの……暗闇……嫌…いやぁぁぁぁぁ!!」


――千冬の声が、廊下に響きわたった。

【………】

俺は、ただ涙を流すことしかできなかった。



〔コン…コン…〕

俺は、扉をノックした。

「はい!」

〔ガチャッ…〕

「おう、琉汰!」

「………」

「…どうした?」

兄貴は、俺の元へ来て肩を叩いた。

「…兄貴…俺……千…冬に……」

「言ったのか!?」

兄貴は、泣きながら話す俺の姿を見て悟った。

「…兄…貴…俺は……千…冬……に…」

涙で、声にならない俺を兄貴は、抱きしめてくれた。

「…琉汰!……よく頑張った……今日だけだ!今日だけ気がすむまで、おもいっきり泣け!…」

兄貴の言葉に、俺は泣いた。


――目を閉じると、ウエディングドレスを着た私を見て 『綺麗だよ、愛してる…幸せになろうな』 って言った琉汰の顔が浮かんできた。

「……恐い……恐いよ…琉…汰…」