看護婦は、俺の手を押さえた。

「…汰…」

【!!】

微かに、千冬の唇が動き千冬は、声を出した。

「千冬!!」

俺は、千冬の手を強く握った。

千冬の眼の回りには、包帯が、まだ巻かれていた。

「…琉汰…」

「千冬!俺は、ここに居る!!」

「…琉汰の…顔…見たい…」

「……あぁ…」

俺は、千冬の右頬を触った。

〔ポン〕

「…待ってろ」

兄貴は、俺の肩を叩き言った。

俺は、千冬の手を離し運ばれていく千冬を見送った。

「琉汰…」

俺の後ろで、おばちゃんは弱々しい声をだした。

「…大丈夫!…」

俺は、おばちゃんの背中を抱え、千冬が居ない病室で、千冬を待った。

どのくらい、時間が過ぎただろうか……病室の中の沈黙をやぶったのは、兄貴だった。

「琉汰…」

「兄貴!!千冬は!?千冬の様子は!?…」

「浩介さん…」

俺は、兄貴の両腕を掴み、おばちゃんは、俺の腕を掴んだ。

「…検査の結果、脳の方には問題がない…」

「本当か!?兄貴!」

「あぁ、だが…眼の方は…」

【………】

兄貴は、俺の腕を掴み離した。

「…駄目なのか…治る事は…」

「…ない」