「眼も見えない人を、嫁にもらっても仕方がないのよ!あなたにだって私達にも、迷惑な存在になるだけよ!」

俺は、御袋に怒鳴った。

「もう、やめろ!!それ以上千冬を悪く言うな!!…最低だ!あんたは…あんたが、俺の母親だなんて…恥ずかしいよ!!もう、ここには帰ってこない!!」

「待ちなさい!!琉汰!!」

御袋は、俺の腕を掴んだ。

「離せ!離せよ!!」

「夢はどうするの!?琉汰、あなた浩介と一緒に病院を創りたい!そう言ってたでしょう!諦めるつもりなの!!」

「…俺は、兄貴みたいに偉くなれない…それにその夢は、千冬も居るんだ…千冬は今、時が止まってる…俺が先に前に進んだら、可哀想だ…俺は、千冬の傍に居る」

御袋の手が、離れた。

「…琉…汰…」

俺は、自分の部屋に行き、身の回りの物をカバンに詰めこみ家を出た。

細く長い階段を下り道路に出た俺は、途中橋の上で立ち止まり、煙草に火を点けた。

「……………」

俺は、医者になることを諦めた訳じゃない…ただ、今は千冬の傍にいたい。

千冬が、目を覚ました時一番に、千冬の声を聞きたい。

「…早く声を聞かせてくれ…千冬…寂しいよ」