言いたくない。

言いたくないけど・・・止まらない。


誰か、止めて・・・・。


止まらなきゃいけないような、気がするのに・・・。



いつしかぎゅっ、と握ったスカートの裾が小刻みに揺れていた。



「・・・・あ、えっと!私は断然王子様!!」



隣でコマキが叫ぶように突然声を出して、私はようやく彼女の瞳から解放された。



マアコは、コマキをみつめて「王子?」と不思議そうな声を出した。



「王子様、って呼ばれてんの。瑞貴王子!」


「瑞貴が"王子"?・・・・ぷっ・・・フフフ、何それ」



よほどおかしいのか、マアコは少しおなかを押さえながらクスクスと笑い続けた。



「瑞貴ね~・・・・確かにかっこいいし、昔から女の子達に人気あったよ?けど・・・・優しすぎちゃって、結局敵を作っちゃうの・・・・きっと不器用なんだよね」


そうして、マアコは近くに生えている大きな木を見つめた。



「・・・・・私これでも、小さい頃はやんちゃだったんだよ?いっつも3人で道草したり、木登りしたり。そうそう、サッカーも。あの時一番へたくそだったのは瑞貴だったんだよ」


「王子が?」


「・・・クスクス・・・・そう、王子が」


彼女はさっきよりほんの少しだけ頬をピンク色に上気させて笑った。


マアコの口から語られる「彼女達の世界」はまるで遠い国のおとぎ話を聞いているよう・・・・。