思わずぐっ、と息を飲むと、小畑さんはゆっくりと言葉を重ねた。



「忘れる、ってのは悪いことだけじゃないよ。果歩ちゃん、君にとっても」



それは……


それって………



「私もユウのことはあきらめた方がいい、ってことですか?私に・・・・ユウを忘れろ、ってことですか?」



絞りだした、私の叫び声に、

違うよ、と小畑さんはかぶりを振ってから、私の頭の上に手をおいて優しげに微笑む。



「全部無くすことじゃない。今を見なきゃ、今の悠司を理解しようとしなきゃ、時間はただ流れつづける、ってことだよ」



そこで、一旦言葉を区切った小畑さんは、もう一度向こうに見えるユウを見つめた。



「俺は今の悠司を信じたい。きっと今だから見えるあいつがあると思うから」



ごめんね、なんか難しいこと言って、って笑う小畑さんに、


なぜか急に泣きそうになって、思い切りブンブンと首を横に振ると、


小畑さんは私の頭を嬉しそうにくしゃくしゃとなでた。



「いい子だね、果歩ちゃん………」




その言葉に・・・・


堪えきれない感情が一気に鼻の奥へツンと熱くこみあがってくる。