「果歩ちゃん。悠司のこと、聞いたよ」


「・・・・・」



そうして、小畑さんは遠い目をして、撮影を続けるユウを見つめた。



「どうしてなんだろうな・・・」



ほかに何も言わないけど、その言葉に、小畑さんの悔しさがにじみ出てるような気がして、私は黙ってうつむいた。



「果歩ちゃん・・・・あのね、俺の知り合いにも記憶障害にかかってしまった子がいたんだ」



「え・・・・?」



小畑さんはまっすぐにユウを見つめてる。


その瞳は厳しいくらいにまっすぐだ。



「果歩ちゃんたちと同じ。その子には好きな子がいたのに・・・それを忘れちまった・・・」



ズキズキと胸が痛む。



私は少しかすれる声で、勇気を出してたずねてみた。



「その人は・・・・どうなったんですか?」



その私の言葉に、小畑さんは、じっ、と私を見つめてから、ふっ、と口元を緩めた。


それと同時に、さっき感じた瞳の中の厳しさが消えたような気がした。



「さぁて・・・・どうだろ」


「?」


「そいつらは、そいつらだし。俺がここで結果を言ってしまっても、悠司がそうなるとは限らない」



そ、それはそうだけど・・・・じゃぁ、なんで・・・・。



「時が流れるとさ。記憶障害じゃなくても、忘れるものは忘れるし、薄れるものは薄れていっちまうんだ。カメラのことも、果歩ちゃんのことも・・・・悠司がこのままなくしてしまうんだったら、それは仕方のないことだよ。他人がどうこうして抗えるものなんかじゃない」