風の音がする。



屋上に続く重い扉を開けると、そこは真っ白な世界だった。



幾枚ものシーツが風にはためいて、雲の白さとあいまり、どこからが空なのか錯覚しそうな不思議な感覚に陥る。



「ユウ・・・」



小声で呼んだ彼の名前は、私の耳の奥に響いて、即座に警鐘をならす。



そっか・・・・


ほとんどユウの名前を面と向かって呼ぶことがなかったけども、


・・・・・・というより、呼ぶことが出来なかったけども、


何回かあったその機会に、私は「ユウ」とは呼ばずに、「悠司くん」と呼ぶようになってた。


その方が・・・・あんなさんの知り合い、っていうことに現実味を持たせられるような気がしたし、


本音では、「ユウ」って呼んじゃうと歯止めが利かなくなってしまうような、そんな気持ちもあったんだ。


約束を守らないといけないから。


そんなわたしにあんなさんは初めは悲しそうにうつむいてたけど・・・最近は、大丈夫、かな・・・?