サルビア

「ああ、おかえり」

エリはあたしの部屋に入り、テーブルの前に腰をおろした。

「どうしたんさ?」

笑顔を作って聞いた。

「今日さぁ、涼に言うたわ…」

「そっか、何て?」

「ん、別に今は産むんとか無理やしな。
とりあえずおろすわ」

はっきりしないエリの答えに、あたしは少しイラっとした。

「あっそ」

「うん…」

何か思い詰めたような顔をするエリ。

一体エリは、何を考えてるんやろう。


そんな事を思っているあたしに、エリは遠くを見つめながら言った。

「なぁ、朝日。
ミナミにいるん、あたし疲れたわぁ」

それは涼と一緒に、東京に行くって事?

黙っているあたしに、エリは続けた。

「もう、色んな事が、うっとうしいわぁ。
本間に大事な人だけ側におってくれたら、もう他には何もいらんわ」