「おらベリル!」

 汚れた白衣で無精髭を生やした中年男性が、彼を指さしながらエレベータから降りてくる。

「やあマヒト。元気そうで何よりだ」

 優雅にカップを傾けていたベリルは、にこりと笑ってその男に挨拶をした。

「元気そうで。じゃねぇよ!」

 マヒトと呼ばれた40代後半の男はベリルの隣に来てテーブルに左手をつく。

「重傷人を何人連れてくる気だ! こっちは大変だったんだぞ」

「儲かっていいだろう」

「平然と言ってんじゃねぇ」

 ふと、マヒトはテーブルに置かれているモンブランに目をやる。

「お前が作ったのか」

「まだ4つほど残っているよ」

「3つ包んでくれ! いや、全部だ」

 聞いた途端、そこにいたホテル従業員に声を張り上げた。