王女の拉致に失敗した部下たちに業を煮やし、短気な皇子は先に仕掛けてきたのだ。

「ベリル、だっけ?」

 レオンはベリルをやや見下ろし、冷ややかに見つめる。

「いくら傭兵の間では『素晴らしき傭兵』と呼ばれてたって、こっちの世界の事はシロウトだろ」

 自分より少し背の低いベリルに警戒心すら湧かないのだろう、彼はそれに苦笑いを返した。

 そしてベリルは、自分たちに銃を構えている男たちをゆっくり一瞥していく。

「さあ、王女。俺の元に」

 レオンはニヤけた顔をノエルに向けた。

「い、嫌です!」

 皇子の片眉がピクリと動く。

 今は丁寧な対応をしている皇子だが、その本性をいつ現すのか解らない……アライアとランカーは王女が殴られはしないかとビクついた。