ルシエッティ王国──王族が住まう城にベリルは訪れていた。いくら小国とはいえさすが王族だ、王宮の品はどれも豪華なものばかり。

 大理石の回廊には高価な陶芸品と絵画が飾られ、侍女と青年の足音だけがゆっくりと響いていた。

「まずはお后様との謁見です」

 侍女が一際(ひときわ)、豪華な扉の前で会釈して発した。

 普通なら王との謁見が先のように思われるが、彼を選んだのは王妃という事で

「まず先に見ておきたい」との事だった。

 なんとなく、スーパーで選ばれた魚のような感覚になる。

「まあ構わんが」

 外見のみで選ばれたようだし……ほぞりと口の中でつぶやき、開かれた扉をくぐり抜けた。