実はそのテのホテルはベリルは顔パスだったりするが、彼の正体を考えると多少の違和感は否めない。

 しかし、彼の正体を知っているからこそ顔パスでもあるのだ。

 表の世界にも表の世界なりのルールというものがあるようで、彼の事が表沙汰になればどんなパニックが起こるのか想像に難(がた)し。

 暗黙のルールのうえに、彼と表の人間との間は成り立っている。

「ダグ」

 少し考えていたベリルが青年を呼ぶように、ちょいちょいと軽く指を曲げた。

「残りはここで待機だ」

「えっ、俺も?」

 がっかりしているアキトに苦笑いを浮かべる。

「こちらをおろそかにする訳にはいかん」

「ちぇ~」

 残念そうにソファに腰を落とし頭の後ろで両手を組んだ。