「これは何ですの?」

 少女はテーブルの上にある大きな皿に興味を持った。

「あ、刺身です」

「サシミ?」

 首をかしげる少女に、ダグラスは丁寧に説明を始める。

「日本料理ですよ。生の魚を食べる習慣が日本にはあるんです」

「まあ」

 金持ち特有の、おっとりした驚きの声を上げた。

 そこへ、ベリルがワゴンを押して戻ってくる。

「! ノエル。疲れていないかね?」

「はい、大丈夫です」

「……」

 王女に向かってその口の利き方は……ベリルらしい、といえばベリルらしいけど、とダグラスとアキトはその光景を呆けた顔で見つめた。