某帝国ホテル──玄関前。

「ふえ~、初めて来たぜ」

 アキトはホテルを見上げた。

 入り口にいる王女の警護らしきスーツを着た男に、ダグラスが話しかける。

 しかし、男は首と手を振って取り合ってくれそうもない。

「もう」

 ダグラスは仕方なく電話をかけ始めた。

「あ、ベリル? いまホテルの前に……」

“プツ……”

「あ」

「切られたのか? まさか怒ってるんじゃ」

「違うよ。しばらく待ってよう」

「……?」

 いぶかしげに思いながらも、言われた通り黙って待つ事にした。