「……参ったな」

 壁に手を突いてうなだれる。

 この展開はまずいような気がする。誤解され続けるのはどうか……いっそ、侍女全員に花を配れば誤解も無くなるかもしれない。

「軽薄な男」と思われた方が、いくらか楽だ。

「は~」

 深い溜息を吐き出した。無表情ながらもその心中は割と当惑しているらしい。

「ベリル」

 呼ばれて振り返ると、ランカーが軽く手を挙げて挨拶した。

「出発の準備を手伝ってくれないか」

「構わんよ」

 そうして、並んで歩く青年の横顔を一瞥してクスッと笑う。