次の日──

「おはようございます」

「おはよう」

 1人侍女が満面の笑顔で部屋に入ると嬉しそうに掃除を始めた。

 この顔には見覚えがある……昨日、邪魔な赤いバラを渡した通りすがりの侍女だ。

「……」

 どうしたものかと掃除風景をしばらく眺め、散歩でもするかと歩き出そうとした。

「あのっ」

「なんだね」

 呼び止められて振り向く。

「あの、昨日。お花、ありがとうございます」

 はにかみながら応えた。

「ああ、そんな事か」

 今更、邪魔だったから押しつけたとも言えない。

「少し出る」

「お気を付けて」

 気遣いの言葉を背に受けて部屋をあとにした。