「飲むかね」

「そのワイン。かなり高級なやつだ」

 そんな青年に男は溜息混じりに発した。

「美味いぞ」

 グラスを小さく掲げた彼に、男は再び短く溜息を吐く。

「まかないは君のことが気に入ったらしい。滅多に出さない年代物だ」

「……」

 言われて、ワインをマジマジと眺めた。

「小国だからな。賓客も珍しいうえに傭兵でその言動はかなり目立つ」

 まあ気をつけろ……ポンと青年の肩を叩き、食堂から出て行った。去っていくその口元がニヤリと笑んでいたのを彼は見逃さない。

 ドン!

「サービスだ」

「……」

 当惑するベリルの前に、鶏の丸焼きが鎮座した。