夕刻──

「君、何をやってるんだ」

 食堂で酒を傾けているベリルにランカーは眉をひそめた。

「仕方なかろう。暇なのだ」

「そうじゃない」

 言って、青年の隣に座る。

「王宮じゅう君の話で持ちきりだ」

「……?」

 理解していない彼に深い溜息を漏らす。

「君、庭園で何かしたな」

「花を見ていただけだ」

「で、いち輪もらったその花はどうした」

「通りすがりの女性に渡した」

「馬場では何を?」

「馬に乗ったが」

「……」

「?」

 ランカーはワインを飲むベリルを眺めて

「君、アイドル並に騒がれているよ」と言い放った。

 ブハッ!? 青年はワインを吹き出した。