「暇だ」

 つぶやいて、王宮の通路を歩く。

「!? えっ?」

 持っていたバラを通りすがりの侍女に渡し、そのまま外に出た。

「!」

 どうやら出た先は馬場らしい、みごとな馬たちが柵の中を優雅に駆けている。する事も無い青年は、そんな馬たちを柵に肘をついて眺めていた。

「! ベリル様、いかがなされました?」

「暇なだけだ」

 どうしてこんな人間までが自分の名前を知っているのかと多少の疑問を残しつつ、馬の世話をしている男に話しかけられて無表情に応えた。

「乗られますか?」

「ふむ……」

 示された馬たちを一瞥し、しばらく思案する。