「実は、問題がまったくないという訳でもないんだ」

「ほう?」

「隣に皇国がある」

 発して、膝の上に肘を立て両手を組んで苦い顔をした。

「うむ、過去には争い合った歴史がある」

「うん。それでね、そこの皇子がノエル王女を気に入ってるらしいんだ」

 どちらもヨーロッパの中の小国だが、さして気にも留められない規模の諍(いさか)いは数百年前から繰り返されていた。

 双方の国には稀少な資源も経済効果もなく、観光好きの人間がレア感覚で来るような国で

『細々と存続している国』という認識をされても不思議ではないほどの小国だ。