「ああ……この男もダメ」

 ここはヨーロッパの中の小さな国──ルシエッティ王国。

 世界地図にさえ、申し訳なさげにしか記されていないほどの小国だ。

 それでも王国は王国、統治しているのは紛れもなく王族である。

 王に一人娘が産まれようが世界は何の関心も示さない。

 それくらいの小国である。

 まもなく17歳になる王女は艶やかな栗色の髪を腰まで伸ばし、輝く碧い瞳は長いまつげがその魅力を高めていた。

 美しい小鳥のような声は両親の自慢だ。