茜なる焔の旗

 トロンブラストを撃つには、電磁波を発生させるための充電が必要だ。

 しかし、今から充電していたのでは安全に破砕できる阻止限界を超えることは確実だ。

 砕けた隕石の破片が突入負荷で燃え尽きなかった場合、凄まじい速度で地表に降り注ぐことになる。

 隕石そのものを撃破できても、それによって被害を誘発してしまっては意味がない。

 と、その時。

 一孝はレーダーサイトの端に、高速で接近してくる影をとらえた。

「鵲…?」

 ホムラに搭載されていた無人戦闘機、鵲。

 翼を広げた鳥のような外観の、動力も操作系統も不明な戦闘機だ。

 ホムラとリンクしているらしい、ということは分かるのだが、その動きは全く制御できない。

 雅が発進する時は格納庫にいたはずだが、いつの間にか追って来ていたのだろう。

「ドッキングサインが出てる?鵲はあいつを敵だと認識してるのか」

 なぜ、鵲が隕石を敵視するのかは分からない。

 だが、鵲のジェネレータを使えばすぐにでもトロンブラストを撃てる。

 一孝はすぐさまドッキングシークエンスに入る。

 鵲の首から先が外れて雅の胸に装着され、翼が畳まれた胴体の前半分が背中、後ろ半分が更に左右に別れて脚に装着される。