すぐに用意に取り掛かる。着替えと財布と携帯、バイクのキー。厚手のミリタリーコートを着込み、それらをスポーツバックに捻り込む。ぱんぱんに膨らんだ満腹のバックを肩にひっかけ、僕は部屋から音も立てずに玄関へ出た。
 ガレージを静かに開け、バイクを慎重に持ち出す。ぬかるんだ地面にタイヤをとられながら車体を起こし差し込んだキーを回す。
 バイクに跨り、フルフェイスのヘルメットを被った。この悪天候は頂けないが、雨足が強いお陰で誰も気付いてないようだ。
 伯母の家まで十五分。僕は走り出した。