ドアが閉まり、タクシーは滑るように走り出した。
「ガム食うかい?」
運転手さんは後ろ手に何かを差し出した。見るとミントの一番きついガムだった。きっと眠気覚ましにいつも噛んでいるのだろう。
「頂きます。」
僕は差し出されたガムに手を伸ばした。噛むと口の中いっぱいにひりひりとした清涼感が広がる。
「親戚の家にって、法要か何かかい?」
この運転手さん、結構立ち入った事を訊いてくるな。内心苦笑しながらも、僕はその問いに答えることにした。
もう会うこともないだろうし、教えてあげてもいいような気がしたからだ。
「母が先日亡くなったので。母方の親族とは長い間疎遠になっていたので、父に代わり長男の僕が報告を。」
「お母さんが亡くなったのかい?一体お幾つで?」
「47でした。」
運転手さんはしばらく黙り込んだ後、やっと聞こえるくらいの声で俺より若いよ、と呟いた。
「辛いだろうけど、元気出すんだよ。悪いことばかりは続かないんだ。」
その励ましは運転手さんが自分に言い聞かせているようにも聞き取れる。
「末期の癌だったので覚悟はしてました。よく頑張ったと思います。」
言葉尻が冷たく聞こえないよう苦心して答えた。
「ガム食うかい?」
運転手さんは後ろ手に何かを差し出した。見るとミントの一番きついガムだった。きっと眠気覚ましにいつも噛んでいるのだろう。
「頂きます。」
僕は差し出されたガムに手を伸ばした。噛むと口の中いっぱいにひりひりとした清涼感が広がる。
「親戚の家にって、法要か何かかい?」
この運転手さん、結構立ち入った事を訊いてくるな。内心苦笑しながらも、僕はその問いに答えることにした。
もう会うこともないだろうし、教えてあげてもいいような気がしたからだ。
「母が先日亡くなったので。母方の親族とは長い間疎遠になっていたので、父に代わり長男の僕が報告を。」
「お母さんが亡くなったのかい?一体お幾つで?」
「47でした。」
運転手さんはしばらく黙り込んだ後、やっと聞こえるくらいの声で俺より若いよ、と呟いた。
「辛いだろうけど、元気出すんだよ。悪いことばかりは続かないんだ。」
その励ましは運転手さんが自分に言い聞かせているようにも聞き取れる。
「末期の癌だったので覚悟はしてました。よく頑張ったと思います。」
言葉尻が冷たく聞こえないよう苦心して答えた。
