グッバイ・マザー

 到着予定まではあと一時間ある。僕は再生時間をきっかり60分にセットし、静かに目を閉じた。

 「終点ですよ。」
聞き慣れない声に、意識よりも体が先に反応した。
「え?」
目を開けると、ぼんやりとした顔の青年が目の前に居た。
「点検の為この車両はここで切り離しますので。降りて下さい。」
朝早かったのが手伝ったのか、かなり深く寝入ってたらしい。
 慌てて礼を言ってすぐに立ち上がり、荷物を持って車両から飛び降りた。