グッバイ・マザー

 駅構内に新幹線の到着を告げるアナウンスが響き渡り、間もなくして真っ白な流線型のフォルムが轟音と共にホームに滑り込んだ。
 何年ぶりだろう、新幹線に乗るのは。少しだけ胸が高鳴るのを感じながら、自分の乗るべき車輌に向かう。
 まだまばらな車輌に乗ると、自分の席を確認し荷物を上げてから座った。
 上着のポケットからアイポッドを取り出し、イヤフォンを耳に運んだ。昨日ダウンロードしたばかりの楽曲を選び、再生ボタンを押すと心地よい歌声が流れ込み、僕の緊張を少しだけほぐしてくれた。到着には約二時間ある。僕はもう片方のポケットからガムを取り出し、口に放り込んだ。