夜は縁側で姉と花火をした。父は祖父と寝転んでナイター中継を見ている。きんきんに冷えたビール瓶とコップ、つまみは枝豆だ。
 母は台所で祖母の手伝い。エプロンは祖母と揃いの白地にレースをあしらったものだ。食器を洗う音がする。
 花火が終ると、西瓜を食べるのが決まりだった。ちょっと小ぶりな玉だが、市販の物よりうんと甘くてみずみずしい。
 母は祖父母の家では本当によく笑った。祖父や父と一緒になってビールを飲むこともなかった。風呂上がりは長い髪を後ろに結わえ、祖母の誂えた桔梗柄の浴衣を着た。それがとてもよく似合っていて、凄くきれいだった。
 それから蚊帳の中で四人並んで寝た。蚊取り線香の匂いが家中を満たし、夜風が肌をゆったりと撫でる。虫の声が闇を包む。