母の骨を拾い、骨壺に入れる。先程までの感情の渦は、もう無い。父や姉や伯母は、泣きながら骨を拾う。
 僕はただ事務的に。そう、まるでお菓子でも、スコップで掬っているかのように。
 母の欠片はきれいに壺に移され、その作業は終わった。
 火葬を終えた父は壺を抱えたまま、僕の方を向き、
「いつ、帰ってくるんだ?」
と、聞いた。咎める様子のない、静かな声の調子で。
「まだ、帰らない。」
僕は父を見なかった。いや、正確には見られなかった。父の顔を見れば、家に帰ると言ってしまいそうだったから。
 「すみません、小名子さん。皐月が迷惑かけます。」
「いえ、いいんですよ。皐月が居ると、私も幾分気が紛れるというか、寂しくないですから。」
 姉は無表情のまま、脇に立っていた。僕はその様子を見ただけで、この場を一刻も早く立ち去りたくなった。
 伯母は父に一礼し、僕を外へと促した。僕の気持ちを察してくれたのだろうか。
 伯母の車に乗り込む。伯母も僕も、やはり無言のままだった。