彼の言葉通り、目的地が近づくにつれてリュシオスは不機嫌になっていった。

 リリアが朝起きると、旅用の外套ではなく、見慣れぬ格好をしている。男性の礼装かとも思ったが、何やら仰々しい。

「……何? その服」
「うるさい黙れ」

 言ってから、少し間をおいて、
「連中の目が多くなるからな。隙を見せられないんだ」
 ばつが悪そうに言い直す。

 籠の中の鳥という印象。それが、リリアが最初に感じたものだった。

「リリア」
 彼女を手招きし、横に座らせる。
「どしたの?」
「黙れ」

 それから出発まで、リュシオスはずっとリリアにもたれかかっていた。目的地まであと二日だった。



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