フェーン・ルード・オム・ファイクリッド ~LeliantⅡ統合版~


 ――あなた一体何ですか?――あなたのせいで眠れなかったんでしょ!――リュシーってば――あたしに構ったから――寝てないってことだよ――リュシーが嫌そうにしてる――どしたの?――ごまかすな!――別に――リュシオス――うるさい黙れって――襲いたきゃ襲えば?――そんな目しなくていい――年、いくつ?――側にいる――この変態!――ふざけないで!――分かんない――一緒に行く――一人にしたら死んじゃうわよ!――そんなリュシーが好き――駄目だよ。リュシー――


 その目は、もう彼の知るものではない。

 彼を、安心させてくれない。

 彼を、甘えさせてくれない。


 ――リュシー――大丈夫――愛してる――リュシー……――


 ――リュシー――


「……あ……ああ……」

 どれぐらいそんな時が流れたか。

 リュシオスは、ただ、恐怖を写した瞳を閉じ、彼女の身体を抱き締め、

「……母さん……姉さん……」
 泣きながら、呟いた。

 いくら強がっても。いくら責任を背負っても。

 彼は――拠り所を失くした、十六の少年だった。



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