――あなた一体何ですか?――あなたのせいで眠れなかったんでしょ!――リュシーってば――あたしに構ったから――寝てないってことだよ――リュシーが嫌そうにしてる――どしたの?――ごまかすな!――別に――リュシオス――うるさい黙れって――襲いたきゃ襲えば?――そんな目しなくていい――年、いくつ?――側にいる――この変態!――ふざけないで!――分かんない――一緒に行く――一人にしたら死んじゃうわよ!――そんなリュシーが好き――駄目だよ。リュシー――
その目は、もう彼の知るものではない。
彼を、安心させてくれない。
彼を、甘えさせてくれない。
――リュシー――大丈夫――愛してる――リュシー……――
――リュシー――
「……あ……ああ……」
どれぐらいそんな時が流れたか。
リュシオスは、ただ、恐怖を写した瞳を閉じ、彼女の身体を抱き締め、
「……母さん……姉さん……」
泣きながら、呟いた。
いくら強がっても。いくら責任を背負っても。
彼は――拠り所を失くした、十六の少年だった。
◇◆◇◆◇

