「……ごめん……」
――夜。
もはや抱いている演技をする必要も無く、彼女をすがるように抱き締め、祈るように言う。
「……ごめん……リリア……」
泣いていた。
「守れない……守れなかった……俺は……俺は……
リリア……リリア……」
虚ろな、彼女の顔を覗き込む。相変わらず、表現というものがない。
「寝ようか……」
ぽつりと言って、彼女をベッドに寝かせる。
彼も、いつもの――いや、かつてのように横になった。
小さな子がぬいぐるみでも抱き締めるように、ただただ抱き締める。
「……抱いて」
やがて聞こえたリリアの声に、リュシオスは急いで顔を上げた。
久々に――遠くから聞こえた彼女の声。
「リリア! 喋った? 今なんて……」
「抱いて」
アイスブルーの目に一瞬宿った希望が、消える。
「リュシーなら良かった! なのに……なのに……
リュシーが抱いて! リュシーならいい!」
「あ……あ……リリア……」
怯えたようなアイスブルーの瞳に、恐怖を宿し、目を見開いていた。
あれほど愛したリリアが……。あれほど愛してくれた、包んでくれたリリアが――。
傷ついた、――瞳。

