フェーン・ルード・オム・ファイクリッド ~LeliantⅡ統合版~


「……ごめん……」

 ――夜。

 もはや抱いている演技をする必要も無く、彼女をすがるように抱き締め、祈るように言う。

「……ごめん……リリア……」

 泣いていた。

「守れない……守れなかった……俺は……俺は……
 リリア……リリア……」

 虚ろな、彼女の顔を覗き込む。相変わらず、表現というものがない。

「寝ようか……」

 ぽつりと言って、彼女をベッドに寝かせる。

 彼も、いつもの――いや、かつてのように横になった。

 小さな子がぬいぐるみでも抱き締めるように、ただただ抱き締める。

「……抱いて」

 やがて聞こえたリリアの声に、リュシオスは急いで顔を上げた。

 久々に――遠くから聞こえた彼女の声。

「リリア! 喋った? 今なんて……」
「抱いて」

 アイスブルーの目に一瞬宿った希望が、消える。

「リュシーなら良かった! なのに……なのに……
 リュシーが抱いて! リュシーならいい!」

「あ……あ……リリア……」

 怯えたようなアイスブルーの瞳に、恐怖を宿し、目を見開いていた。

 あれほど愛したリリアが……。あれほど愛してくれた、包んでくれたリリアが――。


 傷ついた、――瞳。