フェーン・ルード・オム・ファイクリッド ~LeliantⅡ統合版~



「リリ……」
 帰ってきたと、振り返ろうとし、リュシオスは目を見開く。

「……リリア!?」
 虚ろな顔、涙の跡、乱れた衣服。状況は――認識できた。

 ただ、声を荒げる。

「あ……そんな……リリア! リリア!」

 震える手と声で彼女を抱き締め、

「何とか言ってくれ! リリア! リリア!」

 と、突然、リリアを離した。そのまま、彼女をここまで連れてきた将軍に詰め寄る。

「……皇帝陛下にお話したい」
 静謐な、怒り。

「殿下の件は、今朝から全て私の一存で判断するようになっております。お取次ぎは致しかねます」

「貴様!」

 将軍が手を挙げて制した。指し示した先には――兵士に、喉元に槍を突きつけられたリリア。

 状況が分かっているのかいないのか、彼女に反応はない。

「どうなさいますか?」

「貴様らぁッ!!」

 慌てて兵士からリリアを取り戻すと、ただ叫んだ。

「リリア……畜生……畜生」

 将軍が去ってから、リュシオスオスはただ呟き続けた。

 起きているが意思の無い、妻を抱き締めて。




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