「え~と、お気持ちは変わってないかな?」
「お断りしたはずです」
また、どこか分からない廊下を歩きながら、男が言ってくる。
今日は、兵士が二人ついてきていた。男は、ぶつぶつと、それじゃしょうがないと繰り返す。
「まあ、君に見せたいものがある。それを見れば君も意見が変わるだろう」
「変わりません」
また肩を聳やかし、
「気丈なことで」
と、側の部屋の扉を開けて中を覗き込み、
「うん、ここでいいや。入って」
リリアが中に入ると、男は扉を背に立った。
「実はね、リリアちゃん。君に犠牲になってもらいたい」
男は、上着を脱ぎ捨てた。
兵士が、左右からリリアを抑える。
「あの王子様を殺さず壊せ、って言われてね。
愛に飢えた子供だ。拠り所を壊すのが一番いい」
ベルトが、外されて落ちる。
兵士の手は、振り解けなかった。
「彼の拠り所は、君しかないね?」
黒い瞳に、怯え。
――……や、……やだ……助けて……
「リュシーーーーー!!」
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