「お前を取引に使ってきた」
夜。リリアを腕に抱いて、リュシオスが言う。
「お前が惜しければ言うことを聞け、だそうだ」
リュシオスの手に、力が入った。
「……喪いたくない」
「駄目だよ。リュシー」
リリアは、彼にしなだれかかりながら言う。
「あたしは、あなたの重荷になりたくない。あなたの意思を曲げさせたくない」
「……だが……」
弱気になっている。
「駄目だよ。リュシー」
リリアはまた言う。
まだ、戸惑っている。
彼の顔を覆って、唇を寄せた。
「明日、皇帝陛下にお断りして」
一晩話したが、結局、彼はそうした。
――傲慢で我侭で、意味もなくふてぶてしかった彼が、懐かしかった。
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