あの日の願い【短編】

本堂の裏手の出口を通り細い坂道を下る。

途中の花屋を少し覗き、弁財天池でプカプカと浮かぶ亀を眺めながら、元来た仲見世の通りを歩き、鬼太郎茶屋の所に戻ってきた。

ユイは再び店内に入り、土産物を物色し始めた。

僕は売店でアイスクリームを買うと、茶屋の外庭の椅子に腰掛けた。


「どっちがいいかな」


妖怪辞典と鬼太郎のフィギアを持って、ユイが僕のところにやってきた。

どうせ買うのは僕じゃないかと思ったが、口には出さずにフィギアを指差した。

その本なら僕が持っているよ。

そう告げると、彼女は安心したように微笑んで本を戻しに行った。

フィギアをレジで会計して店の外に出ると、ユイは外のベンチに座っていた。


「どうしたの?」


 冴えない表情を不思議に思い、僕は訊いた。


「なんだか疲れちゃったみたい」


少しばかりはしゃぎすぎたのかもしれない。


「この先で、ゆっくり休めるお店があるからもうちょいがんばって」


そう言うと、彼女は「はーい」と拗ねたような声で応えた。