耳元で囁いて





容赦なく降り続ける拳の雨。
山中君の顔は腫れていた。


怖い、怖い、コワイ。
どうしてこうなった?
さっき止めてれば...こうならずにはすんだのに...。



動かない体。
止めたくても動けない。バカ、動け。
山中君が...死んでしまう。


溢れ出る涙。
何にたいして流してるのかは分からない。
勝手に流れてくるのだ。


そんなときだった。
南が立ち上がった。



終わったのだろうかと思った。


けど、違った。


椅子を手に取った南は、こっちを一度見て


「もうすぐ...また、戻れるよ。」

無邪気な笑顔を見せた後、山中君に顔を戻し椅子を振り上げたーー。




まさかッ!!



私はやっとの思いで動いた体で急いだ。



でも....間に合わなかった。
さっきよりも重く鈍い音がまた、教室に響いた。


真っ赤な、血がペンキをこぼしたように流れていた。



「....ッ、きゃぁぁぁぁ!!」




気づけば外は、雨が降っていた。