耳元で囁いて






「うるせぇーよ。」

ドスのきいた低い声。
鋭く指す冷たい視線。


それらで、山中君を威嚇する南。

そんな南に対し、地面に手をついて、南を見上げる山中君。



その光景を見て、やっと理解できた。


あぁ、山中君を殴ったのは...南だ。



私は南を止めなきゃいけない、だけど...出来ない。



“怒り”


彼の中には、それだけしかない。
そんな時の彼に無闇に止めに入れば...もっと、ヤバいことが起きるかもしれない。



そう考えた私は南を止める事はできずにただ、成り行きを見ていた。



けど、これが間違いだとは気づかなかった。



南が山中君に近づく。
殴られてなお、山中君の瞳は南に対する恐怖を感じていない。




すごいな...山中君は。
私には無理だ。


ただ、遠くから見守ることしか出来ない。