耳元で囁いて





「誰...ですか?」



「あ、そうだよね...知らないよね。」
彼は愛嬌のある顔で笑った。



「俺ね...山中、惣一って言うんだ。よろしくね。」


「山...中?」


“山中 惣一って子がアンタのこと狙ってるって。”

藍仔の言葉がよみがえる。


「どうしたの?」


「...え、あ、あぁ、ごめん。何でもないよ。」

「そう?ならいいんだけど。」


「うん...それで、山中君はどうかしたの?」


「いや、ただここ通りかかったら、橘さんが見えたから特に用事は無いんだけど...呼び止めちゃった。」


「そう、なんだ。」


ヤバいな、こりゃ脈ありだ。

「あ、あのさ...。」


「あ、私もう行かなきゃ。ごめんね?じゃぁね、山中君。」


私は山中君の言葉を遮った。