耳元で囁いて






私は、後ろにいた秋野の方に体を向けて秋野の顔を見た。


「別にいないけど....秋野は?いるの?そんなやつ。」



「何で?」


「気になったから。」



私の言葉を聞くと、秋野はふっと鼻で笑って私をみた。


鼻で笑ったって言うけど、秋野の笑い方は...何かをバカにする笑い方じゃなく、大事な何かが愛しいって笑い方するんだ。



じゃぁ、秋野の大事な人って?



するとタイミングよく秋野が言った。



「いるよ...。」


「....へぇ、どんな人?」


「....いつも俺の目の前で笑顔で話をするやつ。」


私を見ながら秋野は言った。



「え...。」



秋野がゆっくり、ゆっくり私に近づいてきて、手の届く距離になったときに秋野は....私の耳元で囁いた。



「好きだよ....初めて、見たときから....旭。」


まるで、悪魔の囁きのように私を誘惑するその声に私は溺れた。



もっと、
もっと、
近くで囁いて。


いつの間にか私達は互いを求めるように、唇を重ねキスをした。