フワフワと揺れる髪を掻き上げ


気持ちを落ち着かせようとしているのか
綺麗なネイルが施された爪を噛みウロウロと部屋を歩き回る


やがて窓の前に立ち


、、シャッ!!


カーテンを勢いよく開けた


「茜、ありがとう、そして、もぉいいわ。」


「えっ…………」


「勇人(ユウト)、、、」


愛俚沙の呟いた言葉に、茜は身体を硬直させた


「愛俚………」


「知らないとでも思ってた?貴女がしたこと、、」


愛俚沙は茜を見ることもせず、窓の外に降る雨を見つめていた




『俺は知ってる、お前が愛俚沙のお気に入りに手を出したこと……』



桜汰の言葉が甦る


「それは…あれはッ……」


まさか、何で愛俚沙が知ってるのッ………



茜は汗ばむ手を握り締め、何とか愛俚沙に許しを乞おうと考えた


この世界は、芸能界は、

喰うか喰われるかの世界……


その中で、愛俚沙を敵に回す事だけは出来ない



「でも、許してあげる。今回報告してくれたから♪」


愛俚沙は茜に視線を移し、微笑んだ


「愛俚沙さん、、、、」


茜はその場に倒れ込みそうになった


もし、今回の事を報告しなければ


きっと、この世界に自分の居場所はなかった


愛俚沙はそれだけの力を持っている



「でも茜、、次はないわ。」


愛俚沙の眼光は鋭く茜を捕らえ


その目に睨まれた茜は、まるで子供のように小さい存在に見えた