「俺がダメなんだ…」

「えっ??」


聞き返す私の瞳に寂しく笑う桜汰君の姿が移った


「俺んち、ちょっと複雑で…ずっと暖かい家庭に憧れてて、
花穂ちゃんや銀星に出会ってやっと自分の場所が出来たんだ
だから…これからはここに帰ってきたい。
二人が側に居ないとダメなのは俺の方だよ。
仕事の邪魔なんかじゃない。花穂ちゃんと銀星が必要なんだ…」


胸がざわついた


こんなに切ない視線を投げかけてくる桜汰君は初めてで


いつも私を抱きしめてくれる大きな身体は小さく見える


「花穂ちゃん…」


気づいたら桜汰君を抱きしめていた

「ごめん…私臆病だった。
ここに帰ってきて!いつでも銀星とお帰りなさいって待ってるから。」


自然と口から出てた

壊れてしまいそうなほど
はかなく見える彼を見ていたら


側に居てあげなくちゃいけない気がした


「私も銀星も桜汰君が必要だよ」

今日ここに帰ってきたときの事を思い出す


二人の笑顔がすごく暖かくて

それだけで幸せなんだと実感できた



「本当にいいの?私達邪魔じゃない?」

「邪魔なわけない!!俺…銀星凄い可愛いし、だから遅く帰ってきたり地方に行って居ない事もあるけど、必ず帰ってきて銀星の寝顔を見て寝たい。」


「ありがとう…桜汰君…」


抱きしめていた私の手を離し
瞳と瞳が重なり合う


そっと目を閉じると唇が触れ合った



ぐっすり寝ている銀星の横で

お互いの存在を確かめるように


何度も何度も深いキスをして


肌を重ねた



『家庭が複雑で』


桜汰君の口から初めて語られた自分の事


いつも私や銀星を優しく包み込んでくれる彼


だけど、もしかしたら


私なんかより大変な思いを抱えながら
生きてきたのかもしれない



少しだけ見えた桜汰君の過去が気になったけど

いつか自分から話してくれるのを待ちたい



桜汰君の腕の中でそんな事を考えていた