「そんなにうまくいかないわよ」


 オレの言葉に、転校生は豪快に笑った。


「でも、なにもしないよりはマシだろ? それにおまえは元々面白いしな。なんだよ、そのしゃべり方。なんでオカマ口調?」


「しゃべりかたはどうだってイイじゃないの」


「どうせならそれを活かせよ。髪型も変えてみたらどうだ? おかっぱ頭にしたら絶対ウケるぜ」


「アンタ、面白がってるだけでしょ」


「どうかな?」転校生はふいに立ち止まり、「じゃあ俺の家、逆方向だから」と元来た道を走っていった。


 ひとりになった途端、夏の暑さがオレの頭を直撃して、意味もなく肩まで伸ばした髪の先から汗が垂れた。

イイじゃない。それなら、やってみるわよ、おかっぱ頭。

モテる男が言うことなんだから、案外うまくいくかもしれないわ。

見てなさいよ、クラスの女子。

明日はオレが、笑い殺してやるわ。


おしまい