ドラマは突然にやってきた。

工場作業のような日々に現れた刺激は、クラスの女子を「女の子」にしたみたい。

ピンク色のオーラが教室をまとっているような気がするわ。


「はじめまして、水野康平です」


 あいさつをしただけで、キャー。オレが話しかけたときの悲鳴とは、まったく質の違う叫び。

まったく、これだからイヤなのよ、クラスの女子は。いっそ殺してしまいたいわ。


 中学3年生の夏。もうすぐ夏休みに入る、という頃にやってきた転校生。

そうね、たしかにカッコイイのは認めるわ。でも、だからって騒ぎすぎじゃないかしら。

ただ、あいさつをしただけなのに、オレが教室に出現したゴキブリを殺してあげたときよりもすごいじゃないの。

あのときも「仲間を殺してる!」なんて喚いてたけど。

まったく、失礼しちゃうわ。顔としゃべり方が違うだけで、こんなにも扱いが違うなんて。


「じゃあ水野。窓際の一番うしろに席を作ったから、あそこに座ってくれ」


 担任が示した席は、オレの隣だった。アラヤダ、イヤな予感がプンプンするわ。