そんなことに少しだけ顔を赤くして、携帯を取り出した。

小さく息を吸い込んで、メモを片手にダイヤルする。


“トゥルルルル──……”


耳に触れる呼び出し音にも緊張していたら、

何度目かのコールが途切れた。


『もしもし?』

「あっ、私……高岡、です」

『何でそんなたどたどしいの?』


電話の向こうでクスクス笑ってる声がする。

……しょうがないじゃん。


『カラオケ終わった? 遅かったじゃん?』

「あ……、一度家、帰って来たから……」

『何で?』

「……ちょっと」

ピアス取りに帰った、とは何となく言えなくて口ごもってしまう。

『で、今どこ?』

「家、ですけど」

『……行っていい?』

「はぁ!?無理!」

思わず声が大きくなる。


『ひでーな』

そう言いながらもまた、クスクス笑ってる。


『家帰ってんなら、私服でうち来て。場所、わかるか?』

「……微妙」

だって雨だったし、あの時は家行くなんて思ってなかったし。


『通りのファミレス、わかる?』

「うん……はい」


だってバイト先だもん。


『じゃ、そこ着いたら電話して』

「わか……りました」



……何着ればいいんだろう。

っていうか、着る物まで意識するなんて、私、どうかしてる……。