またため息をついて、おでこにデコピンを一発。


「イタ……」


「泣かされて、女友達じゃ足りなくなったら来いよ。特別に俺様の胸、貸してやる」

「琢磨……」

「真央。また飯食いに来いよ……ってお袋が」


それから、琢磨は私の手に何かを握らせた。


「誕生日、おめでとう」

そう言ってヒラヒラと手を振りながら、階段を下りていった。


「ありがとう……っ」


聞こえたかどうかわからない。

でも、ちゃんと言葉にして伝えたかった。


ありがとう、琢磨。


握った手を広げてみると、私が昔から好きだったチョコがひとつだけ。

「……ふっ……ケチ」


──だけど、友達に戻れたって……思ってもいいよね……?





駅前のカラオケで盛り上がって、夕方、私達は別れた。

二人の背中を見送ってから、電話を掛けようと思って取り出した携帯を──またカバンに仕舞った。


ピアス、取りに帰ろう。

もらったピアスをして、会いに行こう。




部屋に帰って、変わらずに鏡の前にある紙袋を手に取った。


シルバーに光るピアス。

中央には小さな赤い石がついている。

もしかして、ルビーかな。

そうだったら、私の誕生石だ。


ファーストピアスよりも少し小さめのピアスを穴に通した。


……何か、くすぐったい気持ちになる。