屋上に入れないことをみんな知ってるから、ここに来る人はあまりいないみたいで、人の気配が全然しない。


屋上の入口まで来て琢磨が振り返った。


「きれいに巻かれてんな」

ふっと笑って、私の髪に手を伸ばした。


「ヘン、かな?」

その仕草に何かドキドキする。


「や、いいんじゃね?」


ドアにはめ込まれた窓から光の筋が伸びていた。


「お前、好きなやついるっつってたじゃん。あれ、どうした?」

「どう、って……」

「告ったりしねーの?」

「……」

私は曖昧な笑みを浮かべた。


今日、会った時に言おうって思ってるけど、ちゃんと言えるか自信……ない。



「……泣かされると思うけど。辛い思いすると思うけど。でもお前、それもいいんだろ?」

「……たく、ま?」


誰を思い浮かべて言ってるの?


「……久我だろ? お前の好きなやつって」

「たくっ……」


どうして?


「お前、最初からずっとあいつのこと見てるし、あいつも……。バレバレだっつーの」

「う、そ……」

「俺だってずっとお前を見てきたんだ。お前の視線の先だって気付くっつーの」

琢磨はそう言って、大きなため息をついた。



「苦労すんぞ、教師なんて」


「……ん、わかってる……」

「……覚悟決めたような顔、しやがって」