「……高校生なんだよな、お前」

「…………」


先生はそう言って、少しだけ困ったような顔をして微笑んだ。


「どういう、意味?」

「……や、何でもない」


何でもないってようには見えなかったんだけど……。


「……もし」


口を開いたその時、言葉を遮るように、授業の始まりを告げるチャイムが鳴った。


「……行きなさい」

「はい……」


”先生”の顔に戻ってしまったから、その続きを聞くことは出来なかった。


もし──何?





放課後になり、教室で遥に髪を巻いてもらった。

黒髪でも、巻けば少し華やかな印象に変わった。


「かわいいじゃん!」

「ホント」


そんな私を二人共褒めてくれた。


「ありがと……」

鏡の中の見慣れない自分は少し照れくさい。


ちょうど髪を巻き終わった時、琢磨が教室に入って来た。


「……っ」


私を見て、一瞬目を大きくした。

ヘン……かな。


「真央。ちょっといいか?」


──琢磨に名前を呼ばれたのは久しぶりだった。


「下で待ってるね」

紗依子はそう言って、遥の手を引いて教室を出た。


「上、行こう」

屋上は普段鍵がかかっていて、生徒の出入りは出来ないようになっている。


「え、でも……」

「いいから」

琢磨がそう言って教室を出てしまったから、私も黙って後をついていった。